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■水面栽培法による湖沼の水質浄化
はじめに この試みの目的
私たちは長い歴史において、さまざまな形で水からの恩恵を受けてきました。水のある環境は潤いのある人間らしい生活をするために、無くてはならないものといえるでしょう。ところが、その大切な水環境もこの数十年で大きく様変わりしました。かつては暮らしの一部であった溜め池は、生活様式の変化や都市化とともに汚れ始め、水辺と一緒にあった人々の生活も徐々に遠のき、やがて水質汚染の悪循環に陥ってしまいました。
それまで水のまわりには、助け合いの精神に支えられた豊かな地域社会がありました。しかし、これも経済成長や産業形態の急激な変化とともに弱体化してゆきました。このことは現代日本が抱えるさまざまな問題(犯罪、教育問題、高齢化への対応etc.)につながるとも言われます。美しい水辺が失われてゆくことと現代社会の歪みとは、同じ根を持つのかも知れません。
一方、池や河川の水の浄化については、これまで数多くの努力がなされました。しかし、その多くは大がかりな設備や化学物質などを用いたもので、効果的な水の浄化と引き換えに、多くのエネルギー消費や生態系への影響を通して、自然環境を傷つけてしまう場合もあったのです。
ここにご紹介します「水面栽培水質浄化法」は地域社会と自然環境が抱えるこれらの問題に、ひとつの明るい答えを示してくれるものです。これは、植物の持つ「環境浄化」と「自然の美」という二つの力を借りて、水を浄化しながら、豊かな水辺を力を合わせて作りましょうというものです。このようにこの試みは、美しい水辺を取り戻すこと、その過程で人と人とのつながりが甦ること、この二つを目的としています。
水面栽培法による水質浄化
(1) 水面栽培法とは
「水面栽培法」とは湖沼水面に浮かべた筏の浮力を用いて、植物の根を水中、地上部を筏上で生育させる無土栽培法です。1991年、中国水稲研究所において、食糧生産を主な目的として開発されました。国内においては、財団法人西日本グリーン研究所の縣和一所長(九州大名誉教授)がいち早く紹介し、富栄養化した湖沼の水質浄化を目的に研究が続けられています。私たちも、福岡県春日市のご厚意により、奴国の丘歴史公園内奴国池(旧盤石池)にて99年5月より一年間の栽培実験をおこない、その効果を確認いたしました。

(2)「水面栽培水質浄化法」の原理
「水面栽培水質浄化法」の原理は、この水面栽培法を用いて湖沼の汚濁の原因となる窒素・リンなどの栄養分を、筏上の植物として取り出そうというものです。植物の性質を無理なく応用した、とてもわかりやすい仕組みです。この方法によると、栽培された植物(植物に姿を変えた水中の有機物)は簡単に池の外へ取り出されるため、水の浄化を確実に行うことができるのです。
(3) 特徴と効果
この方法には、次のような好ましい特徴がたくさんあります。
@土の害が無く、病虫害も少ない。
A大きなエネルギーが不要で、誰もが、簡単、確実、安価にできる。
B汚染物質を発生せず、自然生態系へのインパクトが小さい。
C栽培する植物によっては、食糧・飼料・工業原料や花卉の生産が可能。
D水面の緑化は周辺大気の浄化と微気象の調整にも有効。
E淡水生小動物や魚類の多様性を促し、鳥類の生息につながる。
F湖沼景観の魅力が増し、親水性や水辺空間の充実につながる。
G浄化の原理が分かり易いため、環境意識の啓発に活用できる。
H植物栽培や景観美化を通して、生涯教育(自然環境の知識)や
高齢者福祉(育てる喜び、生き甲斐)の面でも効果が期待できる。
おわりに
ご近所づきあいとか界隈などという言葉は、やや遠のいてしまいましたが、子どもが減って大人ばかりが増えてゆくこの時代、潤いのある地域づくりがますます大切になったように感じられます。
ご提案しますこの「水上栽培水質浄化法」には、手間と暇が少しだけ必要です。でも、むしろそのことが大事なのではないかと考えています。長い時間をかけて築き上げられたものは、よみがえるにもやはり時間がかかるでしょう。失いかけている美しい水辺と心豊かな地域社会。少し時間はかかりますが、急がず、焦らず、手作りで取り戻してゆきましょう。
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