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■オゾン層の破壊/世界の取り組み(1998/12/15)
●オゾン層保護のための国際的な取り組み
オゾン層の保護に関しては、国際的な枠組みとして85年ウィーン条約が採択された。87年にはこの条約に基づいて具体的な規制を盛り込んだ「モントリオール議定書」が採択され、この時、5種類の特定フロンと3種類の特定ハロンの生産量削減が合意されている。その後、その他の規制物質が追加されて、それぞれの削減時期が定められました。(表)
【表】
しかし、この議定書をもってしても成層圏の塩素量は現在の2倍になると言われる。また途上国のほとんどが調印していないという弱点もある。旧ソ連は経済復興を理由に調印を拒み、中国は大部分の世帯への冷蔵庫の普及を押し進めている。
●先進各国の対応:規制、罰金、警報
米国はフロンガス規制について最も早くのりだしている。1976年、エアゾール噴射剤としてのフロンガス不使用を発表し、78年には規制が始まった。国際的なフロン規制の取り決めには中心国として取り組んでいる。最も多くのフロンを製造し、放出してきた責任があるとはいえその姿勢は評価されるべきだろう。スウェーデン、カナダ、ノルウェーもフロンのエアゾール使用禁止の措置を81年までに打ち出している。
欧米では、冷蔵庫、エアコンなどのフロン製品廃棄時にフロンガスの回収が義務づけられており、これを怠ると罰金が課せられる。その額は米国2万5千ドル(約300万円)、ドイツ5万マルク(約350万円)、イギリス2万ポンド(約390万円)などとかなり高額である。米国ではフロン税が導入され、フロン利用製品に警告ラベルの添付が義務づけられている。
また、欧米、オーストラリアなど多くの国では天気予報で紫外線警報を発表している。「今日の紫外線強度は8、直射日光を浴びる許容時間は10分」といった具合だ(このためにゴルフの会員権が大きく値を下げた国もあるらしいが)。外出時には長袖の服、帽子、サングラスの着用を呼びかけ、UVローションを塗ることも奨励している。さらに公園や学校の運動場にはテント屋根をかけたり、午前10時から午後2時までは野外授業を避けたり、といったさまざまな対策をしている。まだ、炎天下での運動会や裸ん坊教育が普通である日本とは随分様子が違っている。国内でもプールや公園に屋根をかける自治体が少しずつ増えてはいるが、ソンナコトにお金は回せない、というのが日本の実状か。
●日本の動き:日本人は紫外線に強い?
先進各国では、このように色々な対応をしているが、私たち日本人はあまり気に掛けていない。何故か。有色人種は紫外線に強いのか。UV-Bが原因である国内の悪性黒色ガンは17年間で7倍に増え、陽射しの強い九州ではその数が北海道の6倍にのぼる、ということが日本皮膚悪性腫瘍学会誌(94年)に発表されているそうだ。日本では「UVカット」が日焼け対策として商品PRに使われるぐらいで、本質的な議論をあまり耳にすることがない。
●実効性の弱い日本の取り組み方
日本政府も国際的な場での議論には加わっているのに、国内での取り組みが異なるのは何故だろう。政府は88年に「オゾン層保護法」を制定したが、その内容は
▼ フロンの生産量及び消費量の基準限度など、基本的事項の公表
▼ 特定物質の製造数量などの規制
▼ 使用事業者による排出抑制・使用合理化の努力
であって、「 回収義務」の明示や「放出禁止」ではない。国内でもフロンの回収技術や分解技術は進んでいる。でも、現在回収されているフロンは冷媒用だけで、しかも回収率は家庭用冷蔵庫が20.3%、カーエアコンが7.2%と非常に低い値だ(97/04環境庁)。何故か?
▼ 回収を徹底させる法規制がない。 ▼ 国が各自治体に対応を任せっきりにしている。
▼ 費用負担が明らかになっていない。 ▼ 回収責任がどこにあるかが不明確。
日本の環境政策が欧米と異なって旨く機能しないのは、どうもこんな所に原因がありそうだ。企業責任も消費者負担も曖昧にして、どちらにもいい顔、しわ寄せは全て環境へ。日本はまともな法規制がない点では途上国と同じであるが、その使用量では比べものにならない。世界の15%(2位)なのだ。
自治体任せというのも難しい。確かに一部の自治体ではフロン対策が始まっている。兵庫県がフロン放出を禁止する罰則つきの条例を施行し、京都市は古い冷蔵庫の断熱材に含まれるフロンの回収実験を始めている(98/12/04朝日)。しかし、そもそも地球レベルの課題をどうして県や市に託すのか。啓発と教育という土壌づくりから始めて、法と行政で制度化するという、まさに国レベルでしかできないことではないだろうか。
●オゾン層破壊が他人ごとであるかの様に思われる要因
冷蔵庫の断熱材のフロンは回収できても、一旦、大気中に放出されたものを回収することは困難だ。前に触れたように、大気中に放出されたフロンがオゾン層に達するには15年以上もかかる。今オゾン層を破壊しているのは、15年以上前に放出されたフロンであり、人類がこれまでに製造したフロンの10%程度に過ぎない。残りの80%は既に大気中に放出されている。原因と結果が端的に結び付かず大きなタイムラグがある。逆の見方をすれば、オゾン層保護対策をしてから結果がでるまでにも長い時間を要するのである。
●我々がやるべきこと
1990年、モントリオール議定書の内容を一歩進め、撤廃品目の追加と途上国支援の方策が議論された(ロンドン協定)。世界中の国々がこの協定を尊重し、キチンと実行してゆけば、事態は必ず良くなると予測されている。(図)
【図】
難しいことではあるが、私たちは生活様式をエコロジカルな方向へと切り替えてゆく必要がある。便利快適を追求するばかりでなく、その代償、後始末にも目を向ける姿勢が益々求められることになるだろう。頼みの環境庁は省庁間での力が弱く、法による規制はなかなか実現しない。実際、「カーエアコンのガス補充は不足分だけにしましょう」「車やエアコンや冷蔵庫を廃棄する時はフロンを回収してもらいましょう」「ハロン消火器や発泡樹脂材の使用をやめましょう」などの呼びかけがどれほど功を奏するのか。
もし、本当に日本では法規制が難しいのであれば、かけ声だけではなく、経済に乗せること、商売にしてゆく工夫も現実的には大切なことだ。ヨーロッパ社会の環境保護の動きは、倫理的な動機からだけではない。グリーン社会を実現するための意欲的な経済活動がそれを支えているのだ。日本人はもっとドライに明るく「環境」を商売にすべきではないか。現実から目をそらすよりは、地球は喜んでくれるだろう。
米国では78年のエアゾール用のフロン禁止により、これに代わる物質の開発が進められた。そして得られた代替物質の大部分が、フロンよりも安く生産できることが分かった。フロンの回収技術、精密機械や電子部品の新たな洗浄材、断熱材発泡用の新たな気体など、フロン対策は世界中で進行中である。日本も優秀な技術力をもってこの分野へ貢献できると思う。フロンはなくとも世界はまわるのだ。
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