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■オゾン層の破壊/破壊のメカニズム(1998/11/30)
●フロンがオゾンを破壊する仕組み
大気中に放出されたフロンは、対流圏では化学的に大変安定しているため、他の気体と反応することも雨に溶けることもない。炭素と塩素、炭素とフッ素の結合が非常に強いので、大気圏の下層に届くような弱い太陽光では分解されることもない。空気と比べるとやや重い気体であるが、このように安定していて寿命が長いので、徐々に拡散するうちにその一部が上層の成層圏に到達する。成層圏では太陽からの強い紫外線(UV-B,C)を受けることにより、フロン分子はここではじめて分解されることとなる。この時、フロン分子の中から塩素原子が遊離する。
問題はここからだ。遊離した塩素ClがどのようにしてオゾンO3を破壊していくかを順に見てみよう。
[STEP-1]フロン分子(CFCl3)は先ず、紫外線のエネルギーによって遊離塩素原子(Cl)とその他の破片に分解される。
CFCl3 ・・・・UV・・・・→ Cl + 破片
[STEP-2]遊離した塩素原子(Cl)はオゾン(O3)と反応して、酸素(O2)と一酸化塩素(ClO)に変化する。
Cl + O3 → ClO + O2
[STEP-3]ここで終われば、塩素原子1個に対してオゾン分子が1個壊されるだけですむが、一酸化塩素(ClO)は更に酸素原子(O)と反応して還元され、裸の塩素原子(Cl)が再生されてしまう。再生された塩素原子は同じことを繰り返す。(オゾンは紫外線でも分解されるのでオゾン層内では酸素原子1個の状態のものが存在する。ただし塩素原子がなければ、この酸素原子1個のものは再び酸素分子と結びついてオゾンが再生される。)
ClO + O → Cl + O2
●フロンから出される塩素原子1個は10万個のオゾンを破壊する
このように塩素原子は触媒的な働きをしながら、オゾン分子を次々と壊してゆく。1個の塩素原子はその寿命の内に、およそ10万個のオゾンを破壊すると言う。またフロン自体も、地上で大気中に放出されてから成層圏に達するまで15年ほどかかるし、そもそもその寿命は数10年から100年以上と言われる。その間ずっと、オゾン層は破壊の脅威にさらされているわけである。また、塩素原子は成層圏から離れて降りてくる時、一旦、塩化水素(HCl)をつくるが、これは水に溶ければ勿論、塩酸となる。酸性雨の原因のひとつでもあったのだ。
●オゾン減少の発見とオゾンホール
80年代に入り、オゾン層の侵食がオゾンホールという形で確認されるようになったが、その当初は、観測にあたった当の科学者たちでさえ懐疑的だったという。84年10月、英国南極調査団は成層圏オゾンの40%減少を観測したが、当時の科学者の予測では減少のオーダーはせいぜい1〜2%のはずであった。同じ頃、米国の観測衛星はそれまでオゾン減少のデータを全く示していなかったのだが、NASA はオゾン濃度の測定値があまりにも低い場合はコンピュータが計器エラーとして無視し続けていたことを発見している。その時点でオゾンホールは既にアメリカ本土ほどの大きさまで成長していたことが知らされた。この発見が地球にとってどのような意味を持つのか、大きな危機感を持った科学者たちの努力により、1987年塩素がその原因物質であるという証拠が得られたのである。(図)
【図】
●オゾンホールはなぜ南極にあらわれるのか
極地では冬になると上空に極渦と呼ばれる大気の渦ができる。この渦の中は極低温となりやすく、フロンから塩素の放出が促進される。特に南極は海に囲まれているために外部の大気と混ざりにくく、高レベルの反応となる。そして塩素とオゾンの反応は、極地域の冬の終わり即ち数カ月におよぶ暗闇の世界に久々の太陽光が射した時、その光を受けて一挙にピークを迎える。それから徐々に極渦は収まり、オゾンの減った大気は地球全体へと拡散して行く。
これまで、このイベントは年に一回の出来事であった。ところが近年、それから半年後の北極にもオゾンホールが現れるようになった。環境庁国立環境研究所によれば、北極の極渦は変形し、ちぎれて中緯度にまで及ぶことがあり、時には欧州全域が極渦に入ることもある。海に囲まれた南極と違って不安定なのだ。北海道も年に1〜2回、ちぎれた極渦の中に入ることがあると指摘している。この北極の極渦のなかでも同様に、オゾンは分解されている。むしろ、北半球の方が状況はもっと深刻なのかも知れないと言い切る本もある。フロンを大気中に大量に放出する先進諸国のほとんどは北半球にあるからだ。
●オゾンホールの規模は地球全体のオゾン層の希薄さを示している
オゾンホールはまだ高緯度地域に限られているが、見落としてはならないことは、そのオゾンの希薄な状態は1年の大部分、地球全体に拡散しているということである。新聞報道にもあったように、南極のオゾンホールは毎年規模を拡大している。北極でも観測されている。遠い空にほんの一時期現れる異常な現象と、私たちの便利快適な日常の生活。無関係に見える二つのことが、実は原因結果として大きく関係しあっている。我々には、これらをひとつのこととして考えられる地球規模の感性が求められているのではないだろうか。
●今、オゾン層はどうなっているのか
環境庁が発表した平成9年度のオゾン層の監視結果である。
@極上空において最大規模のオゾンホール が出現すると共に、北半球高緯度域においても1997年3月から4月にかけて大規模なオゾン減少が観測された。
Aオゾン全量は中緯度地域で減少傾向にあり、高緯度ほどその傾向が強い。日本上空でも札幌で減少傾向を確認。
B北半球中緯度においては、CFCの大気中濃度の増加はほとんど止まっている。一方、HCFC、HFCについては、最近増加の傾向にある。
NASAは97年に北極圏のオゾン量40%減少を、日本の国立環境研究所は96年に日本上空での30%以上減少をレポートした。南極だけでなく北半球を含む世界的な問題であることは最早否定できない。
●地球温暖化がオゾン層破壊を加速する?
98年4月、英国の科学誌ネイチャーにNASAと米コロンビア大の共同研究結果が発表された。フロン規制が功を奏し、大気中のフロンは減ってゆくが、オゾン層の破壊は今後約20年間進行し、1980年の水準まで回復するのは2050年頃になるであろう、というものである。地球の温暖化が関係しているというのだ。
フロンからの塩素放出は、気温が下がるほど活発となることには先に触れたが、そのことと矛盾するように思われる。ところが専門家の間では、地球温暖化が進むと地表の気温は上がるが、逆に成層圏の気温は下がるということは常識であり、温暖化がオゾン層に与える影響は以前から懸念されていたらしいのである。この発表は、NASAとコロンビア大が大型コンピュータを使って温暖化の影響予測を行ったもので、北極上空では既にオゾン破壊の加速が始まっていることが判明した。フロン規制の効果で大気中の塩素濃度が下降に転じる2000年を過ぎてもこの加速は続き、ピークは2010〜2019年になると指摘している。そして、ピーク時には最大で上空のオゾンの3分の2が破壊されるとも言う。複雑に絡み合う地球環境の問題の有り様が、ここでもかいま見られる。
→続く
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