GAIA通信 04




オゾン層の破壊/オゾン層の働きと形成過程(1998/10/26)


●成長するオゾンホール
ここに、10月21日の朝日新聞の切り抜きがある。内容は、「オゾンホール、回復が遅れる(気象庁発表)」。9月下旬に過去最大となった南極のオゾンホールの回復が、例年よりも遅れていることを伝えている。最下段に置かれたわずか7行の記事であるが、その内容は重い。他紙からも拾ってみる。

【97/09/14読売】オゾンホール、6年連続で最大規模か・・・・・・気象庁
オゾンホールが南極大陸の約1.3倍、1800万平方キロに達した。最も大きくなるのは、例年10月初旬のため、今年も6年連続で最大規模になる恐れがある。

【97/10/24毎日】オゾン層、南極圏で過去最大規模の減少・・・・・・チリ気象庁
チリ気象庁は、南極圏のオゾン層が過去最大規模で減少していると発表した。9月時点調査では2000万平方キロの範囲でオゾン量が約6割消失していた。これは全欧州の2倍面積に相当する。

【98/08/21朝日】上海で紫外線予報サービスがスタート
上海気象台はこの夏、紫外線予報サービスを始めた。指数は0〜15、10以上が「人体にかなり有害」。今夏サングラスの売上げは倍増。

【98/09/11朝日】オゾンホール最大に、南極大陸の1.7倍・・・・・・気象庁
今年のオゾン破壊量が過去の最大値を上回る見通し。7日時点のオゾンホールの面積は2304万平方キロ、破壊量は6700万トン。

【98/10/01毎日】オゾンホール過去最大に、大陸の約2倍・・・・・・気象庁
南極上空のオゾンホールの面積は、2724万平方キロ、南極大陸の約2倍に発達している。破壊量も8908万トンとなり、過去最高値(94年、8504万トン)を超えた。フロンガスから生じる塩素ガスがオゾン層下部で高濃度となっており、且つ南極上空が超低温という、オゾン層を破壊しやすい条件が続いているためと見られる。

【98/10/02西日本】オゾンホール過去最大に・・・・・・気象庁
(毎日に同じ)ニュージーランド政府の科学機関も同様の発表をしている。今年は拡大が早い時期から始まった。通常最盛期は9月下旬〜10月上旬のため、さらに拡大する恐れもある。

【98/10/07朝日】オゾンホール、観測史上最大
       ・・・・・・米航空宇宙局(NASA)、米海洋大気局(NOAA)

オゾン層は本来地球をすっぽり覆っているが、南極や北極上空には現地が冬の間だけオゾン量が特に希薄となる部分が現れる。これがオゾン層の穴=オゾンホールである。この穴は通常、春先には消滅する。が、このところ穴の大きさが毎年大きくなるとともに、現れている期間が長くなっている、という観測データが数多く報告されている。

地球上で最も気温の低いところは南極であり、オゾン層の破壊は気温が低いほど活発となる。そのため、南半球の冬から春の季節には、地球のオゾン層の健康状態を知る手がかりが南極の上空にオゾンホールとして現れる。しかしこれは、オゾンの希薄な部分が一時的に偏るだけである。オゾン層が壊されることが南極や北極だけの問題ではないということを、私たちは十分に理解しておく必要がある。

●太陽の恵みと脅威
 太陽は水素ガスの塊であり、絶えずヘリウムへと核融合反応を続けている。太陽が1秒間に放つエネルギーは、1億トンのさらに百万倍の灯油を燃やした熱量に相当する。光の速度で8分以上もかかる遠い位置にありながら、地球が太陽から受けている熱と光の量は、1分当たりダンプカー4000万台分の石炭を一度に燃やした程だ。私たちの地球は、太陽が四方八方に放っているエネルギーの内わずか22億分の一の恩恵を受けることで、美しい自然を手に入れたのである。

しかし、このように膨大なエネルギーを放つ核融合反応に伴い、地上の生物にとっては有害なものもたくさん放射されている。紫外線などの高エネルギーの電磁波や放射線がそれである。この中には生物の細胞を分子のレベルで壊したり、遺伝子のDNAを傷つけたりするものもある。だから有害である。紫外線は体の奥深くまでは達せず皮膚で止まるので、ヒトなどでは直ちに生命を脅かすことはないが、微生物などは直接損傷される。このような太陽放射にさらされるので、宇宙空間では宇宙服なしに生活することはできない。仮に十分な水と空気があったとしても、太陽放射から身を守る手だてがない限り、生物が生存してゆくことは不可能なのだ。

●オゾン層は地球の宇宙服
ところが、幸運にも地球はその形成過程でオゾン層という宇宙服を着ることができた。オゾンは酸素原子が3個結びついた構造O3である。大変不安定で他の物質と反応しやすいので、生き物が生活する大気圏の低層部では大気汚染物質の代表である。しかし、地球上のオゾンの大部分は高度20〜25kmの成層圏に集まって薄く広がっている。ここでは、オゾンが太陽光に含まれる有害な紫外線の大部分を吸収して、地上への到達量を減らしている。地球上に生物が存在するための大切な宇宙服の役目をしているのだ。

「オゾン層の破壊」とは、この宇宙服にほころびが見え始めたという意味だ。しかもそのほころびは、自然や宇宙に原因があるものではなく100%人間の活動に起因するものなのである。人間が「破壊」しているのだ。当然、日の光を浴びる全ての生物に悪影響をもたらす。このことについて少し詳しく見てみよう。

今問題になっているのは、太陽から来る紫外線のうち特に生物に有害な影響を及ぼす波長(220〜320nm)のものでUV-Bと呼ばれている。UV-B光線は小さなエネルギーの弾丸で、あらゆる生命を形作っている有機分子を分解するのにちょうど良い波長で降り注いでくる。紫外線A,B,CのうちBはオゾンによって、Cは酸素によって大部分が吸収され、Aの1/3とBのごく一部が地上に到達している(図)。地上に達した比較的害の少ない紫外線は、植物の光合成に働いたり、皮膚内でビタミンを作ったりと、むしろ無くてはならないものである。

【図】

このように、オゾンや酸素は紫外線量を調整する働きがあるが、地球に生命が誕生した頃の地球にはまだこのようなバリアーが無かった。地表面には太陽からの強い紫外線が降り注ぐため、ここで生物が生存することはできなかったのだ。だからまだ海の中にいた。地表面で生息できるようになったのは、地球の上層にオゾン層が形成され、地上に降り注ぐ紫外線の量が少なくなってからのことである。

●オゾン層はどのようにして作られたのか
ではオゾン層はどのように作られたのか。太陽と地球はその大きさや距離が絶妙の関係にあったため、地上は温暖な環境で安定することができた。これは「地球上に水がある」ということを意味している。地球の創生期に放出された水蒸気が、最終的には水の形で地上に留まることができたのだ。そして、このことが生命を生む可能性をもたらした。この辺りからオゾン層ができるまでの過程を見てみよう。

(1)40億年前、高温だった地上も徐々に冷えて100度を切り大量の雨が降って海となった。
(2)空間からもたらされたアミノ酸を元に、海中に最初のDNAが形作られた。
(3)原子生物の進化が始まる。先ず、嫌気細菌ができ、光合成を行う植物が出現する。これが、その頃大気中の大部分を占めていた二酸化炭素CO2を同化して、炭素Cを取り入れて酸素O2を放出するようになる。この状態が、32億年も続く。
(4)O2は地表近くでは安定しているが上空の成層圏では紫外線によって分解される。分かれたOはO2と結びつき、オゾンO3となる。オゾンは非常に不安定で、触れるもの全てを酸化させる。ところが成層圏のような大気の希薄なところでは、オゾン分子にぶつかるものが少ない上、紫外線で新たなオゾンが生成されるため、オゾン濃度が比較的高い状態に保たれるようになる。このようにして徐々にオゾン層が形成されていった。

●オゾン層はわずか3ミリの薄いベール
このようにしてオゾン層は出来上がり、その後長い間、安定した状態にあった。層といってもその実態は大気中の分子10万個の中にオゾン分子1個という極めて希薄なものである。1気圧のもとでは3ミリほどの厚みにしかならない。それでも、太陽光線中のUV-Bを吸収して地球の宇宙服としての大切な役割を担っている。4〜5億年ほど前にオゾン層ができたことで生物は海から陸へ上がる。そして魚類から両生類を経て、現代に至る進化が始まったのである。その進化の過程は今も母親のお腹の中で胎児の成長の過程に再現されている。

→続く