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■地球環境問題の相互関係と食糧問題(1998/09/24)
【図】
今、地球環境に生じていると言われる問題は複雑で多岐にわたっている。上図は現在取り沙汰されている主な問題について、その相互関係をまとめたものだ。これから分かることは、各々が大気や水、生態系や世界経済を通じて複雑に絡み合っており、全体がひとつの問題群を形作っているということである。我々の豊かな生活は、衣食住のほぼ全ての場面でこれらの事柄に関わっていると見るべきであろう。
但し、自分自身に関係があるのはどこか、あるいは自分の責任分野はどの辺りかという見方よりも、より大局的な見方のほうがこの場合正しい理解につながる。即ち、狭い国土で資源も農地も少ない日本という国がなぜ世界の経済大国であり得るのか、そのこととこの図式がどのような関係にあるのかという視点である。すると我々の豊かさがこれら多くの問題の上に成り立っているということが見えてくる。つまり私たち日本の国民は、これらの問題に積極的に取り組んでゆくべき義務も責任も負っているということだ。傍観者ではあり得ないのである。
●日本は地球に養ってもらっている国
その日本人の義務と責任を理解するための最も分かり易い指標が「食料と資源」である。日本人の毎日の暮らしは、国内の環境だけに頼っているのではなく地球全体の世話になっている。たとえば、食糧や工業の原料、燃料などの地球の恵み。よく知られるように、日本はこれら基本的資源の多くを外国からの輸入に頼っている。それらは輸入総額の約6割。トウモロコシ、小麦、大豆、などの穀類の輸入総量は世界で2番目である。
日本が輸入する農作物を作るために、海外では日本の耕地の4倍もの広さの土地が使われている。輸入食糧の中で最も金額が大きいエビは世界貿易量の1/3にものぼる。無論、よその国にもエビを食べる習慣はある。だのに世界人口のわずか2%の私たち日本人が、30数%のエビをお金で買っている。そのお金を得るために、東南アジアのマングローブは伐採され、日本向けのエビの養殖場がつくられる。
辺見庸の「もの食う人々」の中には、日本向けのネコ缶工場で働くタイ女性の話がある。著者はその中で、日本のネコより粗末な食事をする彼女に対し、うっかりこの仕事への感想を訊いてしまうのだが、そのことを悔やんでこう結んでいる。”質問されなければならないのは、私たちのほうなのだ。「あなたの家の猫が食べているその缶詰が、どうやってできたものか想像してみたことがありますか?」と”
食糧以外でも、日本が世界最大の輸入国となっているものは多い(表)。
【表】
つまり、日本は地球に養ってもらっている「地球環境利用大国」である。その「利用」は時として一方的であり、「搾取」に近く、さらにそれが環境汚染や環境破壊(しかも他国の)と無関係であるとは断言できない。
木材の場合など、日本の国土の7割を占める森林資源(その大部分は人工林である)を、私たち日本人はなぜ放置したのだろう。食糧を外国からお金で買い、自国の農地は潰してビルや工場を建てる。お金で買った貴重な食糧は食べ残し、ただ捨てる。いったいこんな国が世界のどこにあるだろう。日本は経済の道を突っ走るあまり、国として本当に大事なこと、自分の力で食べて行くことを放棄したようにすら見えるのだ。強い憤りと同時に情けない思いが迫る。そして疑問。
我々一人ひとりがこのことと無縁ではない。今、日本の食糧自給はカロリーベースで42%、穀物(食用+飼料用)自給率は 30%です(平成7年農林水産省)。重量ベースでは既に30%を割り込んだとも言われる。1日1食もおぼつかない国なのである。
●今だけを見て安心するのは危険
地球環境問題に共通する特性のひとつに、時間の遅れ(タイムラグ)がある。たとえば、二酸化炭素の増加とそれによる気温の上昇の間には、20〜30年のズレがある。フロンは約15年以上かけて成層圏のオゾン層に到達するから、今、オゾンホールを拡大しているのは15年前までに放出されたフロンガスである。そして、その量は過去に生産された全フロンの10%に過ぎないと言われる。規制が始まった現在までに80%が放出され、残る10%は冷却器や発泡材の中に眠っている。今日も、その80%のフロンたちは、ジワジワと上昇しているのであろうか。
あるいは、内分泌撹乱物質(環境ホルモン)によって引き起こされるという精子減少や膣ガンは、妊娠中の暴露から15〜20年後の成人期に現れ、化学物質汚染に対する社会の対応は、様々な立場の思惑も手伝って、それからさらに遅れる。レイチェル・カーソンが「沈黙の春」で40年も前に訴えたことが、いま漸く、明らかな脅威として知られるようになった。その間、その問題は人に知られなかっただけのこと。状況は着実に進行していたのである。あの蓮池の話のように、人類がアクションを起こせるチャンスは加速度的に失われつつある。
●食糧問題への危機感
私は、食糧問題に強い危機感を持っている。日本の社会は世界経済や外交の微妙なバランスの上で成り立っているが、その世界情勢は将来にわたって安定であろうか。
今も世界のいたるところで紛争は絶えず、貧困と飢餓、国際債務問題は益々深刻化しつつある。無論、日本はそれらの地域と経済的に無関係ではあり得ない。さらに、温暖化による異常気象は凌いでも、紫外線は上手に避けられたとしても、世界の穀倉地帯への影響を抑えることは困難。経済の力で食料と資源を得るというやり方がいつまで通用するのであろうか。あのオイルショックのようなことが、食糧の面では起こらないと断言できるだろうか。
特に日本の場合、多くの地球環境問題は経済を通して直接的に食糧問題に帰結するのではないか。この世界的な経済不安、確実にやってくる化石エネルギーの枯渇、環境悪化や耕地減少による食糧難、逆に人口爆発。世界経済のバランスが崩れたとき、日本に食糧を売ってくれるのはどの国なのだろう。国力の基本は「農」にある。実は日本はとても貧弱な国なのではないだろうか。
◇
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